海の底から夢を見る

誰かに私を知って欲しかっただけなんです

彗星の恋

 

夜が眠り、朝と交代しようとする黎明の頃、

通知音と共にスマホが光った。

 

 

「誕生日、おめでとうでした」

 

かつて愛を伝えあった人からだった。

覚えたんじゃんバカ。

ていうかもう過ぎてるし。

 

でもそれも彼女らしかった。

私たちが付き合っていたのは7年程前の話。

風化していく記憶の中で、

今でも色濃く鮮明に覚えている。

たった1ヶ月の恋だった。

 

私はまだ、その1ヶ月を探している。

 

 

当時高校生だった私たちは運命を見つけた。

本当に心の全てを打ち明け合った。

何でも理解し合えて、一緒にいればずっと笑い合える最高の関係だった。

 

彼女こそが、私の初めての「彼女」だった。

若い2人は手探りで愛を育もうとした。

彼女の心の闇も、私の心の闇も知った仲。

私は私の全部をかけて彼女を愛した。

 

けれど彼女にはそれが辛かった。

私の愛が重く、受け止めきれなくなった。

自重で愛が壊れてしまった。

たった1ヶ月だった。

 

別れは彼女から突然告げられた。

彼女は夜通し泣き明かした。

私は心が握りつぶされる感覚を覚えた。

これが心を失うということか。

 

私は彼女をずっとずっと愛していた。

彼女も愛してくれていた。

ただ、その愛が友情か恋愛かわからなくなってしまったのだった。

 

当時の私にはそれの意味する事が理解できなかった。未熟だった。

 

私は今でもその初めての彼女を引きずってしまっている。

どんな人と付き合おうと、どこかに彼女を探してしまうんだ。

彼女との思い出が美しすぎるから、誰と恋をしても彼女がいない事を強調されるだけだ。

 

彼女に会いたい。

もう一度やり直したい。

7年経った今も、たった1ヶ月のかつてそこにあった愛を求め続けている。

私が誰と一緒になろうと、心がずっと満たされないのは彼女に全てを捧げてしまったからだ。

 

本当に本当に大好きなんだ。

君はすっかり大人になって、

遠く遠くへと離れてしまった。

すっかり声をかけるのも憚られる程に、

君と私は住む世界が変わってしまった。

彗星の様な激しく輝く一瞬の恋だった。

 

私の人生は君は出会った事が最大の幸せで、

最大の過ちだと思う。

いつまでも忘れられなくて、ずっと君の幻影に囚われ続けている。

大好きだ。会うたびに心が裂ける。

私はあの頃と変わらない気持ちでやり直せる。

私は君と過ごせるなら何もいらない。

今すぐ全部投げ出して、

2人の世界を生きようよ、お願い。

 

私を置いていかないで。

私の人生から消えないで。

この命をあげるから、どうか、どうか

祈る様に呟くことしか、私には出来ない。

 

心が壊死し、感情が薄くなったのも君のせい

愛の意味がわからなくなったのも君のせい

生きる事の意味がわからなくなったのも

全部全部

君に全てをあげてしまったから

私は空っぽの人間になったんだ

君はそれら全てを持ち去った

 

あぁ、だめだ大好きだ。

君さえいれば他に何もいらない。

本当の愛の前に人は語彙力も失うらしい。

 

誕生日おめでとう

何がおめでたいんだよバカ

君がいなきゃダメなんだよもう

 

 

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