大人と家族
「お前に人の心なんか分から無いのよ」
母親と喧嘩をした。
数ヶ月ぶりではあるものの、わたしは定期的に母を怒らせている。
実家暮らしの弊害ですね。自立しろよって思ったそこのキミ、その通りだよ。
怒らせた理由は至極単純なもので、わたしの愛想が無かったから。
酒を呑んだ母の話は、いつもとても耳障りに聞こえてしまう。
だから適当に合図ちを打っていたら、母が突然キレた。それだけだった。
心に余裕がないなーと自己反省しつつ、言い訳をして応戦する。
しかし、母はわたしに「感情がわからんお前に人の心がわかるか」と、言い放った。
実の娘に感情が欠落していると。でも、事実なんですよね。
わたしは他人の感情の機微に人一倍疎いのかもしれなかった。
学生時代から何度も他人から嫌われたことがあった。それらは全てわたしの無意識的に放たれた心ない一言によって他人を傷つけてきたからであった。
これ以上言い争っても無駄だと思ったわたしは自室に戻った。
母は不機嫌を表すかの如く、大きな生活音をわざと立てていた。
「子供かよ」と吐き捨ててやったが、いい気はせず、全て自分に返ってきた。
あーあ、家族ってなんだよばか。全くわかんねー。
わたし相当に頭悪いな、いつまでもガキのまんまだ。ダッサ。
家族ってなぜ愛し合わなければいけないんでしょう。
家族ほど不思議なコミュニティってないと思います。
誰もが一度は所属し、人生で最も近しい存在。
近いからこそ自分の全てを受け入れてくれるかと思えば、時に反発し、喧嘩をして憎み合ってなお、愛だかなんだかで許し合う。
わたしはそんな輪に入れなかった気がする。
いつの間にか大人になったふりをして、自立したつもりだった。
結果、家族との距離の測り方がわからなくなってしまうようになった。
そして誰にも心を話すことができなくなり、溝はさらに深まった。
家族とは、所詮血が繋がっていて一緒に生活するだけの他人で、そのコミュニティにとらわれる必要などない。
しかし、他人であるからこそ、実はお互いへのリスペクトを忘れてはいけない。
距離感を見誤ればすぐに崩れ去る脆い城。
わたしはいつか人間になれるんだろうか。
わたしは誰にも理解されないんだろうか。
理解させたくないんだろうな。
自分だけが特別でいたいから。痛いから。
意味もない人生に無理やり意味を探す。
わたしはなぜ、こんなにも人を傷つけてしまうのだろう。
自分自身も含めて。
疲れたよ。情けなくてヘドが出る。